先週X(旧Twitter)のフォロワーさんの発電所で、ヒューマンエラーによりプラント停止があったと言うつぶやきがありました。
なんと夜勤中の運転員がDCSの警報音を切って居眠りし、その最中に設備トラブルがあったが警報音が鳴らなかった為それに気づかず燃焼不良により停止に至ってしまったと言うことでした。
ったく!!ボイラーマンにあるまじき体たらく!!
・・・と言いたいところですが、恥ずかしながら実は私も一度似たようなことをやらかしております。
3年ほど前にも記事にしたのですが、新人ボイラーマン時代に中央操作室で筋トレやってる最中にボイラー失火で発電所を停止させてしまったことがあります。
この時は設備トラブルでは無く燃料の品質が悪いことによる失火ということで何とかバレずに済みましたが、私の他にも何回かこういったヒューマンエラーによるプラント停止トラブルを経験したことがあるのでご紹介しましょう!
①発電機監視盤にもたれかかってタービントリップさせた先輩Kさん
これは私が新人で入社する1年前くらいの話です。
その時先輩Kさんは1直勤務が終わり他の班へ引き継ぎを行っておりました。
引き継ぎも無事終わりあとは定時の時間になるのを待つだけ。他の班の人達と雑談しながら残り時間を潰していましたが、この時何を思ったか、後ろにあった発電機監視盤にもたれかかってしまいました。
発電所勤務の方なら知っていることですが、発電機の監視盤にはトラブルで緊急停止が必要な際に運転員が手動で停止できるよう「ボイラートリップ」「タービントリップ」などのスイッチが取り付けられています。
で、Kさんはもたれかかった時にうっかりこの「タービントリップ」スイッチを押してしまい、発電を止めてしまったわけですね。
その発電所は別工場の設備を稼働させるために送電していたので工場の稼働もストップしてしまい、結構な大事になったと聞きました。
このトラブル以降、各スイッチにはカバーが取り付けられ簡単に押せないような対策がなされました。
②掃除用具をコンベアに落とし過負荷停止させた後輩M君
私が入社し数年後、後輩が何人か出来ましたがその中にM君と言う子がいました。
非常にまじめで私たち先輩がサボっている掃除なども積極的にやってくれる子でした。
その発電所では定例作業として、燃料搬送コンベア内に堆積している粉塵を専用の清掃機械を突っ込んで掃除するという作業があったのですが、正直コンベア内に粉塵が貯まったところで別にトラブルになることは無いし、掃除した所ですぐ粉塵は堆積してしまうので私含めてまともに作業している人はおらず、唯一M君だけがこの作業をやってくれていました。
が、ある日M君がコンベア内の掃除をしようと清掃機械を中に入れた所
清掃機械が脱落しコンベア内に落下→コンベアが清掃機械を巻き込み過負荷停止→燃料供給できずボイラー停止
という大惨事になってしまいました。
真面目に作業してくれていたM君はとても凹んでいました。
「いらん仕事たくさんする人ほど失敗もしやすいし仕方ないよネ☆」
なんてクズ発言する先輩までいる始末でM君が不憫でなりません。
この後、対策案を各自考える会議が行われましたが
「そもそもこの作業自体する必要ない」
という意見多数でこのトラブル以降コンベア清掃作業が行われることはなくなりました。
③機器切り替え作業失敗によりボイラー停止
ボイラーには燃焼に必要な空気を送り込むためのブロワが設置されていて、3台中2台を通常運用とし1台を予備機として待機させてあります。
そんなブロワを1か月に1度切り替え操作を行うのですが、その日はB班の3名がその作業を行っていました。
B班は3名おり2名が現場でブロワの切り替え作業、1名が中央操作室でDCS操作を行っており、No1/2で運用しているのをNo2/3へ切り替えする予定でした。
現場の切り替え作業は無事終了し後は機器を止めれば完了、ということでNo1を停止した瞬間
ボイラーインターロックが発報しプラントが停止
停止原因はブロワ圧力低によるものでしたが、実は現場作業で切り替え作業をした際にNo1とNo3のブロワを勘違いで逆に操作してしまっていたため、No1を停止した瞬間にブロワ圧力がNo2のみとなってしまったことが原因でした。
これ以降現場には№1と№3の表記がでっかく掲げられることとなりました。
ヒューマンエラーと言うものは正直どんなに気を付けていても起こしてしまうもので、プラントが停止するほどのものではなくとも大なり小なり皆やらかすものです。
仕事をサボってたりしてやらかしたとかでなければ構わないとは思いますが、こういうやらかしは大抵皆に語り継がれることになるのであまり当事者にはなりたくないものです。