こんにちは。ボイラーマンです。
先日、グループ会社のプラントで法令違反を隠ぺいしていたという事象がありました。
事象が事象だけに詳細は話せませんが、まぁ良くある(?)数値改ざんして報告していた的なものです。
「まったく・・・法令違反を隠ぺいするなんて、とんでもない!」
……と、管理する側としては言わなければなりません。
が、現場経験のある人間としてはほんの少し・・いやかなり
「隠したくなってしまう気持ち」
も分かってしまいます。
もちろん、隠ぺいを肯定しているわけではありませんが、現場にいるとどうしてもそういう誘惑が発生する瞬間はあります。
個人的に一番困るのが、明らかな法令違反ではなく
「これって正直に報告するべきなのか?」
という微妙なラインのときです。
例えば設備トラブルの時や、とある数値が悪い。いつもより高いor低いみたいな。
法令や社内基準に照らすと、
「これ……報告した方がいいよね?」
となるけど、同時に
「いや、もうちょっと様子を見れば戻るかもしれない」
「たまたまかもしれない」
「今報告したら、めちゃくちゃ面倒なことになるんじゃないか?」
という悪魔が耳元でささやいてきます。
そして、もう一人の自分が
「いや、報告しろ」
と言っています。
現場というのはだいたいこの二人の戦いです。
勝率は悪魔の方が高いけどね(笑)
・実際にあった「報告するか迷う」やつ
以前、運転員時代にプラントでこんなことがありました。
とある日DCSの監視中、警報が鳴ったので確認したら一瞬だけ数値が下がってすぐ復旧しているものがあった。
設備自体は普通に動いている。
さて、どうするか。
これが非常に悩ましいですよね。
「一時的なものだろう」
「運転には問題ない」
「もう正常値に戻った」
そう考えれば、わざわざ報告しなくてもいいような気がしてきます。
しかし一方で、
「でも、記録には異常値が残っている」
「もし後から同じことが起きたら?」
という考えも出てきます。
そして最終的には、
「まあ、いっか・・・」
となりました。
で、結果的には駄目でした。
後から
「この時間にこんなことあったけど何かなかった?」
と聞かれて
「こんな警報が一瞬鳴りました」
と言ったら普通に、「早く報告しろよ!」と怒られました。
これとは全くの逆の事象もあります。
ちょっと気になる箇所があって念のために原因を確認してみると、設備側にちょっとした不具合の兆候がありましたが、その段階で対応出来たため大きなトラブルにはなりませんでした。
もし、
「まあ戻ったからいいか」
で終わらせていたら、後になって再発したときに、
「そういえば、前にも同じような数値が出ていたよな?」
となります。
そして記録を見返す。
「あった。」
「じゃあ、なんでそのとき対応してないの?」
となる。
これが一番嫌なパターンです。
さらに最悪なのは、法令に関係する数値だった場合です。
後から、
「このとき基準値を超えてましたよね?」
となった瞬間、
「いや、それは一時的なもので……」
では済まなくなる可能性があります。
「一時的だからOK」というのは、法令の世界では必ずしも通用しません。
だからこそ、迷ったら確認する。
それが必要な報告であるかどうかは上が判断すればよいのです。
これが結局一番安全ですね。
・管理側になって分かったこと
ところが、自分が管理する側になってみると、今度は逆の立場になります。
現場から報告を受ける側です。
すると、
「なんで早く言ってくれなかったんだ」
と思うことがあります。
そして自分でも思います。
「昔の自分も、こんな感じだったな」
と。
人間というのは立場が変わると、都合よく視点も変わるものです。
現場にいた頃は、
「こんなことで報告したら怒られるかな」
と思っていたのに、
管理する側になると、
「いや、こんなことでもいいから早く言ってくれ」
になる。
非常に身勝手です。
でも、実際そうなんです。
管理する側からすると、
問題そのものより、問題を知らされていないことの方が怖い。
これが最近になってよく分かります。
小さな異常なら、早い段階で対応できます。
ところが、
「実は3か月前からちょっとおかしかったんです」
なんて話になると、
「なぜ今まで言わなかった?」
という話になります。
そして、その時点で問題が二つになります。
設備や数値の問題。
そして、
報告されなかった問題。
場合によっては、後者の方が重くなります。
・迷ったら、とっとと報告する
そんな経験から、最近は自分の中で一つの基準があります。
「報告するか迷ったら、とりあえず報告する。」
これです。
もちろん何でもかんでも大騒ぎして報告すればいいという話ではありません。
法令や社内ルールを確認して、必要な報告はきちんとする。
判断に迷うなら、上司や担当部署に相談する。
それだけです。
なぜなら、
報告しないで抱えている時間が、ものすごく精神衛生に悪い。
からです。
「あれ、バレたらどうしよう」
「実は報告しなきゃいけなかったんじゃないか?」
「もし後から発覚したら・・・」
「今さら言ったら、なんで今まで黙ってたんだって言われるよな・・・」
そんなことを考えながら仕事をする。
これが地味にキツい!
しかも、時間が経つほど言い出しにくくなります。
最初なら、
「すみません、こんなことがありました」
で済んだものが、
一週間後
一か月後
そして半年後には、
「実はですね……」
という、ものすごく嫌な前置きから始まります。
こうなると、もう聞く側も怖い。
・報告した方が、結果的に楽
もちろん、報告したからといって怒られないとは限りません。
むしろ
「なんでこんなことになったんだ!」
と怒られることもあるでしょう。
資料も作るでしょう。
原因究明もするでしょう。
再発防止も考えるでしょう。
めちゃくちゃ面倒です。
でも、それでも、
早く報告して対応した方が圧倒的に楽です。
少なくとも、
「バレたらどうしよう」
という不安を抱えながら毎日過ごす必要はなくなります。
そして何より、問題が小さいうちなら、小さいうちに処理できます。
火事と一緒です。
小さいうちなら消火器で済む。
でも見なかったことにして放置すると、消防車が来ます。
しかも大量に。
そして周囲から、
「なんで初期消火しなかったんですか?」
と聞かれます。
「いや、自然に消えるかなと思って・・・」
では済みません。
・隠したくなる気持ちは分かるが・・・
今回のグループ会社の件を見て、改めて思いました。
法令違反を隠ぺいすることは、当然ダメです。
ただ、その「隠したくなってしまう心理」については、現場を経験した人間として理解できる部分があります。
怒られたくない。
面倒なことになりたくない。
仕事を増やしたくない。
評価を下げたくない。
そんな気持ちは、誰にでもあると思います。
だからこそ、
「報告しろ」と言うだけではなく、報告できる環境を作ることも管理側の仕事なのかもしれません。
「こんなこと報告したら怒られるかな」
と思わせてしまえば、報告は遅れます。
そして、報告が遅れれば遅れるほど、問題は大きくなります。
もちろん、悪質な隠ぺいや改ざんは論外です。
でも、現場の人間が、
「これ、報告した方がいいかな・・・」
と迷ったときに、
「迷ったら言ってくれ。そこから一緒に考えるから」
と言える管理者でありたいと思います。
そして自分自身も、
「これ、報告した方がいいかな?」
と思ったときは、
とっとと報告する。
これを心掛けたいと思います。
その方が、精神衛生上も圧倒的にいい。
何より、
「実はあのとき・・・」
から始まる話は、聞く側としても聞きたくありません。
できれば、
「すみません、今ちょっと異常が出ました」
くらいでお願いしたい。
その方がみんな幸せです。
法令遵守。安全第一。
そして、
隠し事は早めに成仏させる。
これもプラント運営には大事なのかもしれません。
