私がボイラーマンだ

3度の飯よりボイラー好き。ボイラーをこよなく愛する火力発電所勤務の変態ボイラーマンの日常を綴ったブログ

ボイラー運転管理~ボイラーの停止方法~

さて、今回はいよいよ皆さんお待ちかね、プラントの起動停止についてのお話です。

これを読んでくれているボイラー好男達はきっと楽しんで頂けると思います。

 

この内容はあくまでも私の勤める発電プラントの手順なので、

「いやいやこの手順は違うんじゃない?」

「ここはもっとこの方法でやった方がいいよ」

といったボイラーマンたちの熱い意見が多数寄せられることかと思いますが、ご了承ください♪

 

これに興味ない奴は悪いこと言わないから去れ。時間の無駄だから。

 

【停止準備】

プラントを停止するのはどんな理由であれ、「ボイラー内部を点検・補修する」こととなります。

 

トラブルによる緊急停止となると準備もくそもありませんが、前もって停止する日を決めて補修する「定期点検」であれば、当然止める日程が分かっている為、予め停止する準備を行います。

 

①燃料残量の調整

石炭のような固体燃料は長時間そのままの状態で置いておくと発熱を始め、そこに空気などが入った場合、着火して火事になる恐れがあります。

重油やガスの場合は気にしなくても良いのですが、私の発電プラントではこういった固体燃料を取り合っている為、停止の際にバンカ(燃料を貯蔵するタンク)をなるべく空にしなければなりません。

なので、停止2~3日前から燃料の調整を行い停止直前にはバンカ内の燃料はほぼ空の状態とするようにしています。

もし停止時に空にできなかった場合は、バキューム車などを使い外部から除去作業を行います。

 

②用水の確保

ボイラーで使用する水というのはただの水道水という訳ではなく、ボイラーを害する物質を機械・化学的に除去した「純水」というものを使用します。

プラントを停止すると、このプラントに必要な純水を作る設備も使用できなくなります。

なので、停止前にこの純水をなるべくたくさん作ってタンクに確保しておきます。

 

③スートブロワの起動

スートブロワとは、炉内の配管に付いた灰を蒸気の力で払い落とす清掃機器のことを言います。

これはやってもやらなくても良いのですが、停止後の清掃作業を効率的に行うために予め行っておきます。

 

【停止操作】

①負荷下げ

発電所であれば発電機の出力を徐々に下げていく操作のことを指します。

これに追従して燃料の投入量も徐々に減らしていきますが、この操作が遅れると燃料過多で蒸気圧力が上昇してしまうので、その場合は一旦操作を中止し圧力を落ち着かせてから操作を再開させます。

 

②タービン・発電機停止

所定の発電出力まで負荷下げしたら、次は発電機を停止させます。

タービンというのは中に羽がついている大きな風車のようなもので、この羽にボイラーの蒸気を当てて回転させることで発電機が電気を作ります。

このタービンに入る蒸気を止め弁で遮断することで、発電が停止します。

 

③燃料停止操作

発電が停止したら、もう蒸気を作る必要が無いので燃料を停止させます。

ただ、燃料をいきなり止めてしまうと炉内温度が一気に低下してしまい、ボイラーに悪影響が出てしまうので、炉内温度が急激に下がらないよう少しづつ燃料供給量を下げていきます。

この時、私のプラントでは重油バーナを使用してこの炉内温度を調整します(炉内温度が下がってきたら重油量を増やす)

 

④タービン真空破壊操作

タービンには「グランド蒸気」という蒸気が軸に流れています。

この蒸気には軸の隙間をシールする役割があり、グランド蒸気がないと発電機とタービンが繋がっている軸の隙間から蒸気が漏洩してしまいます。

また、タービンは効率を高められるよう内部は高真空に保たれており外部との圧力差があるので、この隙間から外部空気が吸引され軸受部などの損傷を招いてしまいます。

燃料が無くなると当然蒸気の発生がなくなりこのグランド蒸気も維持できなくなってしまうので、燃料を停止した場合は速やかにこの真空破壊操作をすることでタービン内部と外気圧の圧力差を無くし空気が吸引されないようにすることが重要になります。

 

⑤ファン・ポンプ停止

全ての燃料が停止したら最後にファンを停止します。

これでボイラー停止は完了となりますが、炉内温度がまだ100℃以上ある場合は水が蒸発を続けるため、適度にポンプからボイラーへ水を張る必要があります。

水が100℃以下になればこれ以上給水する必要もなくなる為、給水ポンプも停止させます。 

 

【停止後操作】

①ドレン弁開操作

ドレンというのは蒸気が冷えて水に戻ったものを指します。

ボイラーを止めて冷えてくると、配管内にこのドレンが溜まってくる恐れがあるため、ある程度ボイラーが冷えたら、このドレンを排出する弁を開けておきます。

 

②空気抜き弁開操作

上記と同じく、ボイラーが冷えてくると配管内の圧力が低下し、この時に空気抜き弁が閉まったままだとボイラー内部が真空状態になる恐れがあります。

この状態はとても危険で、真空状態になっているボイラーのマンホールを開けた際に作業員が内部に吸い込まれる事故も発生したことがあります。

なので、「ボイラー圧力が0.1MPaを下回ったら空気抜き弁を開ける」というのがボイラー業界の一般常識です。

 

③ボイラー水抜き

配管内やポンプの点検をするのに内部に水が残ったままでは行えない為、ボイラーが完全に冷却出来たらその水を全て系外に排出します。

この時、ボイラー水はそのまま排出されるわけではなく一旦排水処理設備できれいな水にしてから外へ排水する必要がある為、この排水処理設備の能力以上の水を一気に抜かないことに注意する必要があります。

 

【終わりに】

すごく簡単にですが、これがボイラーの停止方法となります。

ちなみにこの停止操作に私のプラントでは約12時間、その後の操作全て合わせると約3日程度かかります。

 

皆さんのボイラーはどのように止めているでしょうか。

「うちはいきなり水抜きからやってるよ?」

「空気抜き弁なんて開けたことないし(笑)」

そんな意見もあるかもしれません。

 

是非教えて下さい。

そこに乗り込んでボイラータービン主任技術者をしこたましばき倒します。

 

ボイラーに限らず、手順・マニュアルに沿ったやり方でないと取り返しのつかない事故につながります。

 

皆さんもしっかり事前にマニュアルを確認して、安全なボイラー停止を心がけましょうね☆