こないだの1直は朝から燃料系統を停止して工事を行っていたのですが、まぁまぁトラブルが多発してしまい朝から夜まで久々に気の抜けない一日を過ごしておりました。
【燃料停止後、発電電力急上昇】
燃料供給設備の工事のため、班員Tさんに停止操作を行った後で設備内に残った燃料残渣を炉内に投入する操作をして貰っていました。
私はそれを現場で確認作業中だったのですが、班員Tさんから慌てた声で連絡が
Tさん「すいません!なんか発電電力が急上昇してきてます!!」
私(まぁ今余分に燃料入ってるし多少増えるでしょ)「今どんくらい?」
Tさん「○○(定格の105%超過)KWです!」
私「おっふ・・・ちょっと負荷下げようか」
Tさん「一度中央操作室に戻ってきてもらっていいですか!?」
どうやら燃料が思ってたより多く入ってしまったようで、発電出力が予想より大幅に振ってしまいました。
この時はまだ私たちも
「まぁたまには緊張感あっていいよね(笑)」
などとお気楽に話していました。
【運転員操作ミスによりプラント負荷大振れ】
設備の工事と試運転も無事終わり、あとは燃料を設備に張り込んだら復旧も終了です。
私はその日残業だったので、中央のDCS監視は運転員Sさんにまかせて引き続き現場で燃料の張り込み具合を点検していました。
普段は張り込み作業に30~40分ほど費やすので、スマホをいじりながら待機していました。
・・・とその時、不意に燃料設備の回転がやたら速くなります。
それと同時に慌てた声で運転員Sさんから無線で連絡が入ります。
Sさん「すみませんボイラーマンさん、今すぐ中央に戻ってきてもらえますか?」
私「??了解」
何事かと思って中央へ急いで戻るとかなり緊張した様子のSさんの姿が。
私「何かありました?」
Sさん「張り込み中の燃料設備の回転数を上げようとしたらなんか最大供給量になってしまって・・・しかも止まりません」
私「・・・やばいじゃん」
簡単に状況説明すると
通常運転に必要な燃料供給量に加え、更にそれを遥かに超える燃料が炉内に投入されている。
しかもなぜか止められない。
燃焼状態を監視するための排ガス濃度を見ると炉内酸素濃度は0%(通常3~6%)。
これは「不完全燃焼」といって炉内で燃料が燃え切っていない異常事態を示しています。
また発電出力と蒸気流量はすでに定格オーバー、蒸気温度もタービンの通常運転許容値を遥かに超えた状態まで上昇。
あらゆる異常警報が鳴り散らかす事態に。
私も燃料設備を停止する操作を試みますが、Sさんの言う通り停止信号が入らない。
これはまずい!!まず過ぎる!!
私は再び現場まで猛ダッシュし、現場に付属している停止スイッチを押して設備を緊急停止。其の後またまた中央まで猛ダッシュ。
息を切らせながらSさんと共にボイラー静定を試みますが、すでにあらゆる所で事態は悪化しています。
ボイラー水位、蒸気圧力・温度といった許容値を超えるとプラントが止まる箇所の数値が許容値ぎりぎりのラインまで迫りつつ、正常に運転していた燃料供給系統もプラント変動に供給が追い付かず止まりかけ、そしてそれを抑えるために操作する自分の右手はぶるぶると震えうまく操作できない。
当時を振り返ってボイラーマンはこう語っている・・・
「あの時はもう完全に諦めて、どう対応するかよりプラント止まった後の復旧方法を考えていましたね。はい。」
結局なんとかプラントは持ちこたえ、トラブル発生から約1時間で静定させることができました。
ちなみにこのトラブルの原因は
「通常と違う設定値のまま手順書以外の方法で燃料設備の復旧操作をしてしまったことで、本来あり得ない供給設定値が燃料設備に反映されてしまった」
ことでした。
燃料設備が中央から停止できなかったのはこの復旧操作の際、燃料設備の操作スイッチを中央操作から現場操作優先へ切り替えていたことが原因でした。
今回のトラブルは間違いなく今年一番の重大トラブルとなりました。
私はトラブル対応することで運転技量が上げられると考えているのでヒューマンエラーだろうとこういったトラブルはどんとこいなんですが、何が嫌かってこのことを朝礼で報告せないかんってのがもうね・・・。
【後日談】
次の日憂鬱な気持ちで朝礼に向かった私でしたが・・・
結果的に思ってたより全然指摘されることはありませんでした。
「ヒューマンエラーは仕方ない。防止対策だけはちゃんと考えといて」
くらいのスタンスでした。
プラントが止まったわけでもないしボイラーがやばい事態になったといっても当事者でなければそのヤバさは分からないので
「ヒューマンエラーで発電出力が大幅に振れた」
くらいの報告では良い意味で事の重要さもそこまで伝わらないのでしょう。
良かった良かった。
あとはもう年始までは平和に終わることを祈るばかりです。