去年、電気管理技術者として独立した私の元同僚。
最初は苦労していたようですが現在は何個か物件を受け持つようになり、少しづつですが生活も安定してしてきているとのことでした。
先日そんな同僚が受け持つ大きな工場の年次点検があるから興味あったら見学してみないかと誘ってもらったので、その仕事を見にいくことにしました。
作業内容
■作業前打ち合わせ
メンバーは私と電気管理技術者の元同僚に加え
・同僚の前前職の先輩
・他の電気管理技術者2名
の合計5名でした。
まずはどの工場で停電作業をするのか、だれが何を担当するのかなどを軽く打ち合わせます。
■停電操作
各工場にあるキュービクルのVCB(真空遮断機)を開放して停電操作を行い、停電後はアースの取り付けや検電器での電圧確認などで確実に安全対策を行います。
■作業開始
後は各々が分かれて作業を開始します。
・清掃
この工場は数年間点検がされておらず(法律的にアウトでは・・・?)、非常に設備が汚いので、がいしやケーブル、変圧器本体などをウエスを使って清掃します。
数が多いので私も元同僚や同僚の元先輩と雑談しながらお手伝いしました。
・高圧カットアウトやLBSの点検
変圧器やコンデンサ、負荷に使用されている高圧カットアウトやLBS(交流負荷開閉器)という設備があります。
〇参考リンク
これを専用の作業棒を使って開放し、固着していないかどうかや内部に変色など無いか等を調べます。
これも少しやらせてもらいましたが、高圧・特別高圧電気取扱教育で体験した以来で二度とやること無いと思っていたので、まさか自分がこんなタイミングでやる時が来るとはなぁ・・・なんて感慨深かったです。
・絶縁抵抗測定
メガーを使用して遮断器下流側の絶縁抵抗値を記録します。
私もその測定を体験させてもらうことが出来ましたが、メガーは去年の夏ごろに自分で試しに使った以来で実務で使用したのは初めてでした。
去年自分で記事作っておきながらなんですがすっかりやり方を忘れており、測定ボタン押してなかったり基準値全然覚えてなかったりとわちゃわちゃしながら測定しました。勝手知ったる同僚だったのでまだ笑いながらやれましたが、会社の先輩とかだったら怒られてましたねきっと。
私はそこまで古い設備を扱ったことが無いのでこういった絶縁測定値は∞が普通だと思っていましたが、この工場では基準値以下では無いもののけっこう∞でない所も多かったです。
・各種継電器試験
OCR(過電流継電器)、DGR(地絡方向継電器)といった各キュービクルに設置されている継電器を、試験機を使用して設定された値で動作するかどうかを試験します。
試験機はめっちゃごつい箱にスイッチがいっぱい付いていて、私には何がなんやらさっぱり分かりませんでしたが、同僚もまだ使ったことは無いらしく助っ人の電気管理技術者2名がメインで使用していました。
家に帰った後色々調べてみたら、ちょうど今回使用していた試験機に近いものを使っている紹介動画があったのでこれを見て勉強しました。
結局よく分かりませんでしたが我が社でも定期点検で同じようなことをメーカーの人がやっているらしいので、今度機会があったら見てみようと思います。
■復電
試験時に多少不具合もあったものの16時くらいには全工場での清掃や試験と言った作業が終了したため、最後に各キュービクル内に工具などの置忘れが無いか、遮断器入れ忘れが無いかを皆で確認し復電操作を行いました。
他の電気管理技術者の皆は最後の後始末があるので残っていましたが私は特にもうすることもないのでこの時点で先に帰らせてもらいました。
メンバー達
今回は全員初対面の人でしたが、全員気さくに話してくれる人たちだったので割と人見知りの自分でもすぐに打ち解けることが出来ました。
・同僚の前々職の先輩
新卒で同僚が入社した機械メンテ会社時代の先輩。
電験などは持ってないものの、実務でバリバリやっている人だけあって私より断然作業に詳しい。やっぱり資格だけじゃ実務やってる人には敵わん。
一緒に清掃作業を手伝った関係でたくさん雑談をしましたが、休日返上で仕事したり月90時間くらい残業してるのに自分と同じくらいの年収だったり有給全然取れなかったりするのに、何かすごい前向きに仕事してて凄いなぁと思いました。
「自分全然仕事出来ないんですよね・・・」
って言ってたけど、仕事ぶりを見るに我が社に来たら間違いなく即エースになれる人材。
・電気管理技術者Aさん
元々電気とは別業界だったがサラリーマンが嫌で電験撮って独立した方。
楽をしたくて独立したはずなのに休むと仕事がなくなるんじゃないかと言う不安から仕事を入れまくり、結果リーマン時代より休みがないとのこと。
本末転倒では・・・?と思ったけどその代わりにお金は凄い稼げるし本人はかなり今の仕事に満足しているらしい。
・電気管理技術者Bさん
元同僚と同じく最近電気管理技術者として独立した方。
まだ管理技術者一本では食べていけないので民間のエアコン設置など電気工事関係のバイト等もやっているとのこと。
※電気管理技術者は厳密にはアルバイト含む副業禁止ですがその辺は仕方ない模様
独立して自分の腕一本で食っていこうとしている人たちだけあって、当たり前ですが皆仕事への姿勢が真面目そのものでした。
電気管理技術者に聞いた!独立して良かったところや注意点
良かった所
・職場の煩わしい人間関係から解放される
嫌いな上司、合わない同僚・・・サラリーマンならそういった人種ともずっと付き合っていかないといけませんが、独立すれば人間関係はお客さんくらい。
お客さんが嫌な人でも別に四六時中一緒なわけではないし、どうしても嫌ならその物件を断ればよいので仕事はずっとしやすいとのこと。
この点だけでも独立するメリットは充分ありますね。
・自分の裁量で仕事量を決められる
休みたい月はがっつり休んだり稼ぎたい時はがっつり仕事入れたり・・・完全な自由では無いものの社会人に比べればかなり自分の好きなように働ける。
・仕事の失敗も成功も全部自分のもの
サラリーマンであれば自分がやった仕事でなかったことも何故か自分が怒られたり、仕事頑張って成果出してるのに評価が上がらなくて理不尽に感じたことが誰もが経験したことがあると思います。
独立すれば全て自分一人で仕事をしなければならないので大変ではありますが、もし失敗してもそれは自分の責任なので納得出来るし仕事を頑張れば頑張った分だけ報酬として帰ってくるのでこういった理不尽なことからは解放されます。
これは自分に自信があれば利点ですが、私みたいな他人任せな無責任男にとっては逆に欠点かもしれません。
注意点
・最初の「顔売り」が大事!
今から独立する人の多くは、現役の人に紹介してもらったり引退するおじいちゃんから物件を譲ってもらったりするらしいですが、管理技術者の集まりの際にこういった人たちに顔を売っておかないと中々新規で物件が手に入らないとのこと。
この辺は自営業をする人に共通することですね。
・寂しがりにはつらいかも
お客さんとのやり取りはあるとは言え仕事の大半はほとんど一人で作業することが多いので、人喋るのが好きなタイプだと寂しい仕事かもしれないとのこと。
喋るのだるいと思ってる私からすればむしろ羨ましいことですが。
・初期投資は多いし最初は稼げない
今回の停電操作で使用した試験用機器や配線、携帯式バッテリー諸々は全て実費で用意しなければなりません。
伝手があれば貰い受けることも出来るそうですが、そうでない場合は初めにこうした備品を揃えるのに数百万という投資が必要です。
また、その後独立しても最初は中々物件を取ることが出来ず電気管理技術者1本で食べていくのは数年は難しいとのことでした。
メリットデメリットはありますが、やはり独立の苦労<<サラリーマンの苦労であるらしく、どの電気管理技術者の方も口を揃えて
「これを知ってしまってはもうサラリーマンには戻れない(戻りたくない)」
と言っていました。
特に前職がブラック気味だった人はこの傾向が強いみたいです。
また、未経験から独立する場合はどのタイミングで行うか?という私の質問については
「やりたいと思った時が一番のタイミング。技術や知識なんてやりながら身に着けていけばいいし、そういうのを考えていたらいつまで経っても独立できないよ」
未経験でいきなり実務やるなんて怖くないかなと思いましたが
「そういうのを深く考えない楽天家な人が向いてるかもね(笑)」
とのことでした。
感想
久しぶりに充実した一日だった!
ぶっちゃけ今年に入って一番仕事してて楽しかったです(仕事じゃないけど)
最近は現職で元々やる気のあった同僚のモチベーション低下ぶりやいざこざ等もあり私自身のモチベも落ちてきていましたが、今回はいい刺激になりました。
単純に電気知識としての為になる話や職場の面白話などで盛り上がったり、仕事中も停電しているので他に従業員もおらず、誰かに怒られたりするわけでもなくのんびりできたり・・・
(電気管理技術者も悪くないぁ)
って思える体験をさせてもらいました。
とりあえず、今回の体験で得た知識を風化させないよう電気の知識は今後もちゃんと勉強しておこうと思いました。