私がボイラーマンだ

3度の飯よりボイラー好き。ボイラーをこよなく愛する火力発電所勤務の変態ボイラーマンの日常を綴ったブログ

水圧試験の種類や方法について

以前水圧試験に関して

「最高使用圧力の1.5倍で行う時と1倍で行う時の違いは何ですか?」

「作業方法はどうやって行うか?」

の質問を受けたことがあるので、今回は私がやったことのある水圧試験の方法について説明してみます。

 

試験圧力が1.5倍と1倍の違い

これはボイラー技士の構造規格で勉強する範囲ですが、ボイラーの水圧試験をする際、その設備の最高使用圧力の1.5倍の圧力で行う試験と1倍で行う試験があると思います。

例えばボイラーの最高使用圧力が10MPaであるなら15MPaで行う水圧試験と10MPaで行う水圧試験があるということです。

 

・1.5倍で行う水圧試験

これはボイラーを製造して使用する前に行う検査の場合に行います。

また、使用していたボイラーを一旦停止した後に再度使用する前の検査、補修した後に問題ないかを確認する際の検査でも1.5倍で行う必要があります。

 

・1倍で行う水圧試験

すでに設置して使用されているボイラーについて異常の有無を確認する際は最高使用圧力の1倍で水圧試験を行います。

 

ボイラーは定期検査の際に水管の内部の状況を確認するために管寄せの部分を一旦切断し、点検後は再度管寄せ切断部を溶接し直す為、そういった取り付け部分から漏洩が無いかという確認や、内部を確認しきれない水管部分に漏洩が無いかと言う異常の有無を確認したりする場合は最高使用圧力の1倍の圧力をかけて試験を行います。

 

ちなみに規定としては最高使用圧力の1倍以上で良いですが、実際は1.1倍程度の圧力をかけることが多いのではないかと思います。

 

まとめると

一度も使用していないボイラー、使用をやめていたものを再使用するボイラー、異常があって補修を行ったボイラー

の試験は1.5倍の水圧。

使用中のボイラーについて異常が無いかを確認するための試験

は1倍の水圧で行うといった感じです。

 

・水圧試験の方法

火力発電所の水管ボイラーでの方法で説明します。

①水張前の弁状態チェック

水圧試験に必要な箇所の弁の開閉状態をチェックします。

特に普段開けている計器用の弁は、水圧でかける圧力が1.5倍の場合の際は計器の故障防止のために閉止したりします。

普段と違う弁状態なので、やり忘れや戻し忘れの無いようバルブリストでダブルチェックする等、入念にチェックします。

 

②ボイラー水張り

火力発電所の給水は大体「脱気器→ボイラー給水ポンプ→ドラム」というラインで行われます。

そしてドラムで水と蒸気に分離され、蒸気は過熱器を通って蒸気タービンへと入ります。

以前作成した火力発電所のライン図を参考にしてみると下記のようになります。

通常運転時はドラムに半分水、半分蒸気がある状態なのですが、水圧試験はボイラーを満水状態で圧力をかける必要があるので、ドラムを全て水で満たし、更に蒸気配管途中まで水を張る必要があります。

 

蒸気配管には主塞止弁(しゅさいしべん)と呼ばれる止め弁があるので、水圧試験の水張時はこの弁を全閉にした状態で主塞止弁手前まで水を張ります。

 

先ほどのフロー図で言うと下記水色で囲った箇所が水張りおよび水圧試験の範囲になります。


③空気抜き

配管内部に空気が残留すると圧力をうまく上げれなかったり保持出来ないので、水張をする際は最上段であるドラムや蒸気配管のベント弁という空気抜き用の弁を開けて置きます。

 

水張中はこのベント弁からブオーッと空気が抜き出され続け、空気が完全に抜け切るとそこから水が出るのでこの時点で空気抜き終了としベント弁を閉止します。

 

④昇圧操作

試験の為に昇圧する機器は、使用前のボイラーでは水圧試験用ポンプを別途で使用するのですが、使用中のボイラーの検査では大抵ボイラー給水ポンプにて行います。

 

昇圧はいきなり100%圧力をかけるのではなく、例えば1分間に0.1~0.5MPaづつといったように指定された昇圧曲線に従って上げていきます。

 

よって、操作前には必ずドラムに入る手前の給水止弁を全閉した状態であることを確認します。(これが空いているといきなり100%圧力が水管にかかることになるので)

 

ボイラー給水ポンプを起動後は給水止弁もしくは昇圧用のバルブを少しづつ開けていき昇圧していきますが、この時の注意点として配管やドラムに取り付けてある安全弁が噴出さないよう、テストギャグというものを順次取り付けていきます。

 

⑤圧力保持

試験圧力まで昇圧出来たらその圧力を30分間保持し、問題無ければ試験終了となります。

圧力が降下してくる場合は現場点検を実施し原因究明を行います。

 

⑥圧力降下操作

圧力を下げる為の弁はドラムや蒸気配管のベント弁を少しづつ開けて行います。

圧力降下も昇圧と同じく降圧曲線に従い徐々に下げていきます。

 

圧力降下操作と並行して、昇圧時に行った安全弁テストギャグの取り外し作業を実施します。

 

⑦蒸気配管水抜き

蒸気配管のドレン弁及びベント弁を開放し、蒸気配管の水をすべて抜き出します。

蒸気配管の水を全て抜けきったら、水圧試験の為に全閉していた主塞止弁を全開にしておきます。

 

⑧弁状態を起動前の状態に戻しておく

水圧試験終了後、一度ボイラーの水を全抜きする場合はドレン弁で水抜きしますが、そのままボイラー起動前の状態で待機させる場合は、ボイラーの水はドラムの常用水位の位置くらいまで抜いておきます。

また弁の開閉状態は起動前の状態に戻しておきます。

 

以上が火力発電所での水圧試験操作方法になります。

頻度としては2年に一度ボイラー検査の際に行う最高使用圧力の1~1.1倍の水圧試験が多いと思います。

 

ボイラーマンなら実務で必ず行うことになる試験ですしボイラー技士の試験でも出題される範囲なので、行う試験の種類や操作方法は知っておいて損は無いですね。