ボイラーにはスートブロワと呼ばれる、ボイラーで発生した蒸気を一部利用して過熱器や節炭器、空気予熱器の配管に噴射するという設備が設置されています。
過熱器、節炭器、空気予熱器は排ガスと各媒体を接触させ、排ガス温度を下げて蒸気や給水、空気の温度を上げることでボイラーの効率を上げる為の熱交換器になるのですが、排ガスには燃料の未燃分であるフライアッシュが含まれており、このフライアッシュが過熱器や節炭器の配管に付着すると排ガスとの熱交換効率を下げる原因になります。
よって定期的にスートブロワを使用して熱交換器に付着したフライアッシュを蒸気の力で洗浄しています。
・・・が!
この時の注意点として、スートブロワはたくさん噴けば噴くほど良いという訳ではありません!
今の説明の通り、スートブロワの噴霧媒体にはボイラーで発生した高温高圧蒸気を使用して配管に吹き付けるので、頻度が多過ぎると配管が摩耗して最悪破孔する恐れがあるのです。
実際、去年の定期点検にて過熱器に一部スートブロワが影響とみられる顕著な減肉箇所が発見された為、運用方法の見直しが行われることとなりました。
【熱交換器に減肉が見られた際のスートブロワの運用方法について】
①スートブロワ使用頻度の変更
最も手っ取り早く確実な方法。
例えばスートブロワを一日3回行っていたのであれば2回に減らすといった感じです。
回数を減らすだけなので即日行えるうえに噴霧頻度が減るのであれば減肉する進行速度も確実に減らすことが出来ます。
②スートブロワ噴霧圧力の変更
配管に吹き付ける蒸気の噴霧圧力を下げることで摩耗の進行速度を抑える方法。
設定の変更が必要なので多少時間が掛かると言う点と、実際に圧力が下がったとしても摩耗の進行状況が減らせるかどうかの確実性は①ほど高くありません。
ただ、スートブロワの設置台数が多いボイラーだと全部吹き付けるのに時間が掛かる関係でそもそも1日1~2回しか出来ないような所もあり、その場合①の方法を取れないためこちらの方法を実施することもあります。
③摩耗が顕著な箇所の配管のみスートブロワを停止する
全体的には問題ないものの特定の熱交換器の一部だけが摩耗している・・・という場合は、そこに吹き付けるスートブロワのみ単体で停止・または頻度を下げるという方法があります。
各スートブロワの運用設定を変更しなければならないのでやや面倒ではありますが、他の熱交換器のスートブロワ頻度を下げなくて良いという利点があります。
ちなみに破孔を防ぐと言う面で考えれば、スートブロワの運用方法を変更する以外にも熱交換器の配管を肉盛溶接 or プロテクターを取付るという手もあります。
これは定期点検時に出来るならという条件付きですが、摩耗が特に顕著な箇所を肉盛溶接したり、耐摩耗性に優れた材のプロテクターを取り付けることで破孔を防ぐ方法です。
こうしたスートブロワの運用についてはボイラーを停止した時に配管を良く点検して決定する必要があるので、もしスートブロワが設置されているボイラーを取り扱っている方がいれば是非停止時に確認するようにしてみて下さい!