私がボイラーマンだ

3度の飯よりボイラー好き。ボイラーをこよなく愛する火力発電所勤務の変態ボイラーマンの日常を綴ったブログ

ボイラー設備について~空気予熱器~

【空気予熱器とは?】

ボイラーで燃料の燃焼用空気の温度を排ガスとの熱交換によって過熱する為の装置です。

doragonking.hatenablog.com

ボイラーの熱効率を上げると言う目的自体は前回紹介した給水加熱器と同じですが、給水加熱器がタービンで仕事した蒸気を加熱媒体に利用するのに対して空気予熱器は燃焼ガスの廃ガス熱を燃焼用空気に回収利用しています。

 

【種類】

熱の伝え方により「伝熱式」と「再生式」があります。

伝熱式には配管を通して空気と排ガスが間接的に接触することで熱交換が行われる方式で、配管にフィンを設置することによって伝熱面積を大きくすることで効率を高めています。

再生式は特殊な形状のエレメントを装着した伝熱面に排ガスを通して熱を吸収させ、次に空気を通すことでエレメント内で吸収されていた熱が空気を加熱する方式です。

再生式には回転式と固定式に分けられて、更に回転式にはユングストローム式、固定式にはローテミューレ式などに区分されています。

 

どういったボイラーに何式を使用するかは分かりませんが、個人的には割と小型のボイラーには伝熱式、大型の石炭ボイラーなどには再生式が利用されるイメージです。

【効率管理】

空気予熱器の中でも特に再生式の使用時には主に2つの管理項目があります。

・空気予熱器空気漏洩率

空気予熱器における空気のガス側への漏洩率です。

空気漏洩率の増加は漏洩した分だけボイラー熱損失となり効率低下となってしまうので、出来るだけ低く管理する必要があります。

空気漏洩量/ヒーター入口湿りガス量

または

ヒーター入出口の湿りガス量差/ヒーター入口湿りガス量

により算出されます。

・空気予熱器温度効率

予熱器の熱交換率をガス側と空気側でそれぞれ求めたもので、空気予熱器の効率を示す指標となります。

ガス側温度効率

=ヒーター入出口ガス温度差/ヒーター入口ガス温度と入口空気温度差

空気側温度効率

=ヒーター入出口空気温度差/ヒーター入口ガス温度と入口空気温度差

空気予熱器温度効率

=ガス側温度効率+空気側温度効率/2

【保守時の注意点】

排ガスの熱回収は最上段に蒸気温度を上げる過熱器、給水温度を上げる節炭器、そして最下段に空気予熱器が設置されています。

 

※マインクラフトの各系統紹介時にも説明しています。

doragonking.hatenablog.com

最下段の排ガス温度は当然最も温度が低くなるのですが、排ガスにSO2といった腐食成分が含まれると、低温部で硫酸となり空気予熱器の配管を腐食させてしまう恐れがあります。

 

熱回収を行う意味では排ガス温度は下げれば下げるほど良いのですが実際にはこの腐食の問題で一定温度以上下げるのは好ましくありません。

よって、排ガス温度がこの低温腐食が起こらない温度域(大体120~150℃)で排ガス温度を制御しています。

 

この制御には蒸気式空気予熱器と言う設備が使用され、押込みファンと空気予熱器の間に設置されています。


この蒸気式空気予熱器により冷却媒体である空気の温度を予め上げることで、排ガスと熱交換した際に排ガス温度が下がり過ぎないようにしています。

腐食成分の多い燃料を使用する固体燃料ボイラーでは必ずと言っていいほど見かける設備ですが、腐食の心配のないガス焚きボイラーなどでは蒸気式空気予熱器はあまり馴染みがない設備かもしれません。

 

蒸気式空気予熱器の加熱源にはタービン抽気や主蒸気から取り出した低圧蒸気が使用されますが、低圧蒸気を利用する場合は使用量が多いほどボイラー効率が低下するため注意が必要です。

【監視項目】

空気予熱器にばいじんやさびが付着することで閉塞することを監視するために入口と出口の差圧を管理したり、排ガス温度の数値によって蒸気式空気予熱器の蒸気量を増減して出口温度を変えたりします。

 

もし排ガス温度の低下傾向が著しかったりファンの動力や排ガスドラフトが増加している場合は空気予熱器配管の破孔が考えられるので、蒸気式空気予熱器だけで温度制御が賄えなくなったら最終的には空気予熱器に空気を通さず直接炉内へバイパスさせることで排ガス温度を維持したりします(熱効率は落ちるが空気と熱交換しないので排ガス温度低下を防ぐことが出来る)

 

【最後に】

排ガスの通路には過熱器・節炭器・空気予熱器という3つの設備があり効率的に熱回収が出来るようになっています。

この中でも空気予熱器は低温腐食の観点から他の設備より特に注意して保守運用をしなければ破孔などのトラブルになりやすいです。

 

とは言いつつ運転管理で出来るのは空気予熱器の差圧や温度監視程度ではありますが・・・