私がボイラーマンだ

3度の飯よりボイラー好き。ボイラーをこよなく愛する火力発電所勤務の変態ボイラーマンの日常を綴ったブログ

ボイラー設備について~給水加熱器~

【給水加熱器とは?】

その名の通りボイラーに給水する水を加熱するための設備で、見た目はボイラーによくある蒸気ドラムと同じ横方向に長い筒のような形状をしています。

 

なぜボイラーは燃料を入れて水を沸騰させているのになぜわざわざ事前に給水を加熱しておくのかというと、その方が燃料の使用量を削減できるからですね。

 

温度が20℃の水を100℃まで上げるのと温度が80℃の水を100℃まで上げるなら当然後者の方がより少ない燃料で100℃にすることが出来ます。

ボイラー効率の計算式は

発生した蒸気の総熱量/使用した燃料の総熱量

なので、この分母が少ないほどボイラー効率が上昇します。

 

給水加熱器はこのボイラー効率を高める役割があるのです。

 

加熱用の熱源には蒸気タービンから一部の蒸気を取り出して使用します(抽気という)。

せっかく作った蒸気を給水加熱に使用するのはタービンで仕事させる蒸気量が減るのでもったいないような気がしますが、復水器で冷却され放熱する為のエネルギーロスが減るので結果的に熱効率は向上します。

【種類】

主に設置場所によって低圧給水加熱器(LPH)と高圧給水加熱器(HPH)があり、LPHは復水器出口から脱気器までの低圧給水ライン、HPHは脱気器出口からドラムまでの高圧給水ラインに設置されます。

設置数に決まりは無く、ボイラーや発電機出力の大きさによって設置する個数は増減します。

 

加熱方式によっても表面加熱式(加熱管を通して間接的に給水を加熱する方式)と直接加熱式(給水と蒸気を直接加熱する方式)がありますが、一般的には表面加熱式が採用されます。

 

【構造】

私は表面接触式しか知らないのですが、表面接触式では給水が通る加熱管側と抽気が通る胴側(別名シェル側ともいう)に分かれています。

胴側は更に蒸気凝縮部とドレン冷却部(ドレン・クーリング・ゾーンを略してDCZ部とも呼ばれる)に分かれています。

 

蒸気凝縮部は抽気が加熱管と接触し潜熱を奪われることで熱交換され凝縮し、ドレンに戻る部分です。加熱管に流入した蒸気は管の中央部に向かっていきその間に飽和ドレンとなり、次のドレン冷却部へ流れます。

管の中央部には非凝縮性ガスを放出する空気箱に連続ベント部が設けられており、蒸気に混入する空気を抜き出しています。

 

ドレン冷却部は加熱管入口部辺りに設置されており、蒸気凝縮部から流れてきたドレンを加熱管で最も温度の低い場所である給水入口部分で顕熱を奪い熱交換することでドレン温度を更に低下させる場所です。

 

最終的にドレンとなった抽気は、低圧給水加熱器なら復水器、高圧給水加熱器なら脱気器など直前のタンクへ戻されて熱回収し再利用されます。

 

※超適当なイメージ

【制御】

給水加熱器では胴側の蒸気ドレン水位を常に一定水量に保つレベル制御が行われています。

給水加熱器には出口側にポンプも無いのになぜ水位を保つ必要があるのかと言うと、前述した蒸気凝縮部に流入した蒸気が、潜熱を奪われドレンになる前にドレン冷却部へ直接流れ込むのを防ぐ封水のような役割を持たせるために行われています。

 

また、加熱管が破孔して胴側に給水が流れ込んでしまうとタービンへ水が混入して破損させてしまう恐れがあるので、一定のレベル値を超過すると抽気配管に取り付けてある止め弁が自動で閉まるようにインターロックが組まれています。

 

【最後に】

こうした給水加熱器を保有した発電所の熱サイクルのことを再生サイクルと呼びます。

 

設備自体が大きいので大規模プラントには良く採用されますが小~中規模クラスの発電所だとあまり見かけない設備かもしれません。

 

蒸気を発電以外で利用しない発電所は復水器での熱損失が非常に大きいので、こうしてあらゆる所から熱回収することで少しでも熱効率を上げるための涙ぐましい努力をされているのです。

 

私としてはもっと発電機の効率上げるとかの努力を電気屋さんにしてほしい所です。