【概要】
エネルギー管理士とは省エネルギーセンターが開催する国家資格です。
電気分野と熱分野の2つに分かれて行われており、以前は工場に選任するにはそれぞれの分野で一人づつ必要でしたが、現在はどちらの分野でも取得していれば選任できるようになったため、受験する人は自分の得意分野で受ければ良くなりました。
合格率はだいたい20~30%で電気分野の方がいつも熱分野より合格率が低い傾向が有り、そのせいで熱で取る人は電気分野で取った人にバカにされがちなのが納得いかないところです。
プラント関係の資格の中では上の下~中の上くらいの難易度に位置する資格で、持っていれば「プラントについてそれなりに知識のある人」扱いされます。
私は熱分野で取得したので、以下に記載するのは全て「熱分野」での話になります。
【課目と合格点】
課目Ⅰ:法令
課目Ⅱ:熱力学
課目Ⅲ:燃料と燃焼
課目Ⅳ:熱利用設備
全ての課目で6割以上で合格(課目合格制度あり)
【受験動機】
私のいた会社ではこのエネルギー管理士の資格を取ると報奨金が貰えます。
しかしそれも不況の波に負け、「今年いっぱいで取れたら満額貰えるけど、来年からは減額する」という。
チャンスは今年だけ・・・なら絶対一発で取ったるわい!!
という気合で、受験を決めました。
【受験時期と勉強期間】
勉強期間:6か月(約500時間)
前述のとおり今年取れたら報奨金満額支給というすさまじいモチベーション材料があったおかげで、毎日3~4時間は欠かさず勉強に取り組むことが出来ました。
これが無かったら一発合格の勉強は出来なかったと思います。
【勉強方法】
メインは過去問題で、これを15年分ほど何回もやり込みました。
過去問題は最終的に9~10割方解けるようになるまで勉強しました。
けっこう界隈では有名ですが、この試験は問われる内容の難易度は高いものの過去問題からの類題が多いのが特徴です。
勉強し始めは難易度の高さに心折れそうになるかもしれませんが、騙されたと思って過去問5年分を丸暗記してみてください。
案外解けるようになるものです。
・課目Ⅰ:法令
省エネに関係する法律と、熱分野・電気分野それぞれの基礎知識を問われる課目です。
ボイラーマンである当時の私の電気の知識は皆無であったため、その範囲に関してのみ参考書も使用して理解を深めました。
ここで一番重要なのが、SI単位の組立単位を覚えることです。
これを理解しておけば、今後勉強することになる熱力学や燃焼系の計算がかなり楽になります。
特に「W=J/s」の単位変換を覚えておくと何かと役に立つのでおすすめです。
組立単位の例
・課目Ⅱ:熱力学
おそらくどの情報を読んでも言われている事ですが、
エネルギー管理士熱分野ではこの課目Ⅱの熱力学が鬼門です。
私もこの課目Ⅱ分野は参考書も使用して特に集中的に勉強しました。
勉強時間の7割くらいはこの分野に費やしたといっても過言ではないです。
他の課目に比べても圧倒的に計算問題が多く、文章問題も熱力学・流体工学・伝熱工学といった専門教科的な所から出題される為、苦手は人はとことん苦手だと思います。
ただ、この課目も完璧に理解しようとせず過去問題を繰り返し解いて、計算式や各サイクルの形などを丸暗記すれば案外解けるようになりますので、苦手だからと言って諦めずに頑張ってください。
そんなことは一切ありません。
私も未だに全く微分積分は分かりませんが、過去に出題された範囲の計算式をごっそり丸暗記したのみで十分問題は解けました。
・課目Ⅲ:燃料と燃焼
気体・液体・固体の各性状(引火点や流動点等)と、燃焼計算についての課目です。
燃焼計算は計算式や計算方法にある程度の法則が決まっているので、過去問をやり込めばまず間違いなく解けるようになります。
あとは各燃料性状の暗記さえしておけば合格点にはすぐ達する実力が付くと思います。
ちなみに公害防止管理者大気の「大気特論」や特級ボイラー技士の「燃焼」分野と出題内容が丸被りしているので、その辺りの資格や勉強をしているならば難易度はかなり下がります。
・課目Ⅳ:熱利用設備
計装・制御やボイラー・タービンといった熱利用に使用する設備についての知識を問う課目です。
この課目のみ選択科目があり「熱交換器関係」「冷凍機関係」「工業炉関係」「蒸留設備関係」の4科目から2課目を選んで回答します。
特に得意分野がなければ「熱交換器」と「冷凍機」あたりをおすすめします。
工業炉や蒸留設備は石油化学プラントや製鉄所などに勤務していて実物があるって人以外は知識としてあまり必要無いですが、「熱交換器」はボイラー設備にはほぼ必ず設置されているし、「冷凍機」も身近なクーラー等にも応用できる知識な上に今後もし高圧ガス保安責任者試験の冷凍機械責任者を受験するならこの知識がそのまま適用できます。
この課目はかなり範囲が広い上に専門的な設備に関する問題が多く、実務をやっていないと中々想像ができないので難しく感じるかもしれません(冷却塔、給水加熱器、タービン各種等)
ですが、意外と過去問と同じところからしか出題されていないので、参考書を使用するよりかはひたすら過去問のみをこなした方が良いです。
そうすれば「その設備のことは良く分からないけど問題は解ける」という状態には十分達することができます。(資格勉強あるある)
【使用した教材】
この資格は省エネルギーセンターという所が開催している為、必然的にそこが発行している参考書を使用するのがセオリーです。
「参考書」
・エネルギー管理士試験講座 熱分野・電気分野共通1
・エネルギー管理士試験講座 熱分野2
・エネルギー管理士試験講座 熱分野3
・エネルギー管理士試験講座 熱分野4
エネルギー管理士試験講座 熱分野・電気分野共通〈1〉エネルギー総合管理及び法規―平成30年度改正省エネ法対応版
- 作者: 省エネルギーセンター,ECC=
- 出版社/メーカー: 省エネルギーセンター
- 発売日: 2019/05/01
- メディア: 単行本
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エネルギー管理士試験講座 熱分野〈4〉熱利用設備及びその管理
- 作者: 省エネルギーセンター,ECC=
- 出版社/メーカー: 省エネルギーセンター
- 発売日: 2006/02
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基本的に、この参考書の文面が試験に出ます。
全ての参考書を読み込む必要は無く、過去問で出題された範囲を読み込む程度で問題ありません。
・やさしい熱計算演習(省エネルギーセンター)
課目Ⅱの勉強におすすめ。
ですがこの参考書、実は
全然やさしくありません
初学者がいきなりこの参考書を解いて勉強しようとすると、絶対に挫折するのでおすすめしません。
ただ、過去問10年分がだいたい解けるようになってきたくらいの時期にこの参考書で勉強すると、確かに式の解き方などが親切丁寧に書かれていることがわかるので、ある程度の知識がある人にとってはおすすめの参考書です。
「問題集」
・エネルギー管理士熱分野模範解答集(電気書院)
過去問題も省エネルギーセンターから発行されていますが、
こちらは電気書院の過去問をおすすめします。
こちらの方が掲載されている年度数が多いのと、解説が細かくされている為です。
【合格体験】
試験結果
・課目Ⅰ法令:70%
私は法令関係の暗記がとにかく苦手なので、そのあたりの取りこぼしが多かったです。
ただ、基礎知識を問う問題ではほぼ満点とれていました。
・課目Ⅱ熱力学:90%
一番やり込んだだけあり、初見問題がほとんどないくらいの手ごたえを感じました。
解いてる最中
「・・・これもらったわ(笑)」
とほくそ笑みました。
・課目Ⅲ燃焼:75%
序盤の燃料性状関係の問題が意外と解けず苦戦しました。
ただ、燃焼計算が例年通りだった為、そっちでほぼ満点を取り挽回しました。
・課目Ⅳ熱利用設備:80%
ほぼ過去問通りの問題ばかりでした。
【最後に】
私が合格できたのは、発電所勤務で設備などに馴染みがあったのも大きな要因だったと思います。そうでなければ課目Ⅳはもう少し勉強が必要でした。
そして上記の通り、見事に一発合格を果たし報奨金をゲットしました。
しかし給料上乗せだった為、
税金で数十万以上持ってかれました。