【概要】
この資格は電気工事士と同じ電気技術試験センターが主催する試験で、資格名は正式には「第3種電気主任技術者」と言いますが
電気主任技術者試験の頭文字を取って電験3種と呼ぶことが多いです。
ビルや工場と言った高圧で受電する電気工作物の工事・維持・運用に関する保安監督を行うための資格で1種~3種までの種類があり、それぞれの種類によって選任できる受電設備の電圧が決められており
1種:すべての設備
2種:電圧17万V未満の設備
3種:電圧5万V未満の設備
となっています。
1種は全ての設備の保安監督が出来るとありますが世の中の受電設備の大半は3種で十分、多少大きい設備でも2種の17万Vあれば十分事足りる上に1種の難易度はそこらの資格と比べても次元の違うレベルなので、電験道を歩むような猛者ですら大半は2種で終えることが多いと思います。
【科目と合格点】
科目は全部で4科目で「理論」「電力」「機械」「法規」があり、3年間のうちに全て60点以上取れば合格です。
2022年度以降は年に2回(8月、3月)となり、3年間のうちに6回の受験で4科目に合格できれば免状取得となります。
難易度の高く合格者数が少なくなる場合は合格点数の引き下げ制度があり、以前はどの科目も大体55点取れれば科目合格出来ましたが、2021年度以降の試験は結構60点がボーダーとなっていることが多いです。
私が受験した2022年度上半期(8月)では機械と法規の難易度が高く合格点引き下げはありましたが、理論と電力の引き下げはありませんでした。
年2回になった代わりに合格点引き下げするハードルが高めになっているのかもしれませんね。
【難易度】
個人的難易度を5段階で表すと
(5:難しい、4:やや難しい、3:普通、2:やや簡単、1:簡単)
5・・・難しい
私が今までの人生で受けた試験でも最高難度に位置します。
特に計算や数式にアレルギーや苦手意識のある私のようなタイプはスタートの時点でだいぶ苦労すると思います。
エネルギー管理士熱の科目2「熱力学」や特級ボイラー技士の「取扱」といったような
この科目だけが難しい
というものが無く、全科目が万遍なく難しいのが更に厄介です。
科目別の難易度をさらに細かく分けて解説すると
理論・・・(初心者)5:難 (電気専攻者)1:簡単
電験を取ろうと勉強を始めた人の大半はこの科目で挫折してるんじゃないかと思うくらい難しい。
理由としては私含め多くの人が大嫌いな計算の嵐で、一定以上の数学力が無いと答えの解説ですら意味不明な所にある。
物理とかと違って物のイメージも掴めないので分からん問題はとことん分からんし、どれだけやり込んでも出来るようになったという実感が湧かない。
しかも電気素人はこの科目の基礎が出来ていないと他の科目の計算も意味わからんという負のループ。
逆に言えば数学力のある人やもともと学校で電気の基礎を学んできた人はこの理論を無勉で受かったりする。ずるい!!(?)
電験3種は難易度高いと言われているけど、ぶっちゃけこの理論が合格できればもう半分合格したようなもんだと思う。
電力・・・3:普通
初学者にもおすすめNo.1の科目。
暗記問題と計算問題が半々くらいで、暗記問題も各発電所とか送電・配電設備といった目で見てわかるような設備に関する項目が多いので暗記しやすい。
計算問題もたま~に難しいものもあるけど、火力や原子力、水力などは電気知らなくても解けるし、電気に関する送電配電なんかの計算もパターン化で解けるものも多い。
努力の数がそのまま点数に反映されがちなので、勉強のやりがいが一番ある科目。
全体的な難易度が比較的高い年もあるけれど、
「電力のせいで電験に合格出来ない」
という人はまずいないと思われる。
機械・・・4:やや難
一般的にはこの科目が一番難しいとされていることが多いものの、個人的には理論の方が圧倒的に難しい。
勉強し始めはその項目や公式の多さにかなり取っつき辛いと感じるものの、実際に難しいのは
「どの問題でどの公式をどのようにして使うか?」
という所にあり、計算自体はどれも4則演算(+ー×÷)で解ける。
数年のインターバルで鬼のように難しい年度がありその年は阿鼻絶叫になるものの、やたら甘い難易度の年もあるので、ちゃんと勉強していれば3年以内には必ずとれる科目だと思う。
法規・・・3:普通
他の科目よりも癖が強く、人によっては4~5レベルの難易度に感じることもあると思う。
他の3科目よりも問題数が少なく更に暗記系の問題が多いので勉強はしやすい反面、1問当たりの配点が大きいのでミスしづらい上に年度によってはマイナーな法律が出題されることもあるので気は抜けない。
計算問題は実務絡みの問題が多く最初は取っつき辛いものの、ある程度やり込んでコツさえ分かれば計算自体はかなり簡単。その代わり1問当たりの配点が7点とかなり大きいので取りこぼすとえらいことになる。
機械科目と同じくかなり簡単な年と鬼難易度の年の落差がかなり大きい。
【受験動機】
発電所、もっと言えばプラント業界で働いていくなら最終的には取っておきたい資格№1だった為。
毎年毎年「そろそろ受けよう」と思ってはいたものの、難易度の高さと電験スパイラル(科目合格しかできずに何年も電験を受け続けること)になることが怖くて中々踏み出せなかったけど、2020年度時点で工業系の資格をほとんど取得しきってしまったために2021年度でついに受験を決意しました。
【勉強方法】
オームの法則、三角関数すら知らんレベルから始めると、他の資格勉強では通用する
分からないなりに解説を見ながら数年分過去問を解いて出題パターンを覚える
という手法が出来ません。
だって解説で何やってるか分からないんですもん。
なので電気・数学素人は地道に参考書から始めた方が無難。
電験は需要も多く人気資格なのでYouTubeに問題の解説動画や計算・考え方のコツみたいな動画が多く出回っているため、暇があるならそういった動画の視聴もお勧めします。実際自分で参考書見ながら勉強するより有意義な動画が一杯ありますので。
細かい勉強法は過去にまとめております。
最もよく使う数学は三角関数。すべての科目に万遍なく出ます。
使用頻度高すぎて逆にいちいち勉強しなくてもなんか勝手に使えるようになるレベル。
他の知識はそこまで使えなくても合格は出来ますが
平方根・複素数・ベクトル・最小定理関係は最低限出来るようになると理論の合格率がグーンと上がるのでお勧めです。
基本的には問題集や過去問を中心に勉強し、不明点は都度参考書や動画で補強と言った方法で行いました。
最終的な勉強時間は
理論:334時間(2021年)+180時間(2022年)=514時間
電力:144時間(2021年)
機械:244時間(2021年)
法規:141時間(2021年)
合計:1043時間
ということで、素人が電験に合格するのに必要な勉強時間と言われる1000時間を私も行なうことになりました。
この合計勉強時間のうち各科目の勉強時間の割合は
理論:49.3%
電力:13.8%
機械:23.4%
法規:13.5%
となり、理論に総勉強時間の半分を費やしました。
数学苦手、電気素人が1から電験を受験しようとしたら、多分私と同じ感じになると思います。
【受験体験】
2021年度
8月22日受験日当日と解答速報の記事。
この年は理論がかなり難化しその他の科目が軒並み易化した当たり年でした。
この年は過去問中心に勉強していましたが、理論以外は全て80~90点台をマーク。
2022年度
8月21日受験日と解答速報の記事。
この年はまさかの理論から過去問そのまま出題と言う今までになかったパターンに驚きました。
しかしそのおかげで初見問題1問以外すべてを正答し95点で余裕の合格となりました。
9月5日合格発表
11月25日免状到着
【最後に】
まさか電験3種の合格体験をこの手で書ける日が来ようとは・・・!!
感無量・・・!!
私が受験した2022年度以降、電験3種の試験は年2回の開催な上に過去問からの出題もされていくということで、残念ながら今後は取得しやすくなることで希少性は薄まるかもしれません。
でも過去問そのままでも難易度自体は高いし、需要自体はまだまだこれからもある・・・はずだと思います。
数学苦手だからといって諦めずに勉強し続ければ決して取れない資格ではないので、取得は検討しているけど不安・・・って人も受験ハードルの下がっているこの時に是非チャレンジしてみて下さい!!