先月から遊んでる記事ばっかで全然ボイラーについて話してないので、久しぶりに真面目な記事書いていきます。今回はタービンについてです。
電験やエネルギー管理士の勉強でもタービンの構造や種類は出てきますが、そこで勉強するのは大体
「衝動型と反動型」、「再生型と再熱型」、「抽気復水型と背圧型」
みたいなものが多いと思います。
でもこういった資格の勉強だけではあんまり出てこないんですが、タービンで使用した蒸気の排気方法による型の違いもあります。
ちなみに発電所に勤めている方のタービンと復水器のレイアウトはどうなってるでしょうか?
一般的な所だとタービン建屋内にタービン発電機が置かれ、その下の階に復水器が配置されていることが多いと思います。
これが実は蒸気の排気方法によって3パターンにレイアウトは選定されており、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
恐らく最も典型的なレイアウト。先ほど言ったタービン・発電機の下に復水器が配置されるタイプ。
【メリット】
・メンテナンスしやすい
タービンの排気管や抽気管が下に向かっているので、タービン解放点検の際に余計な配管取り外し作業の必要がないです。
またこの型は大抵天井クレーンを付属していることが多いためタービン解放作業も行いやすく、広く強固な外壁に覆われているので取り外した部品の保管場所にも困りません。
・景観が良い
これは正直完全な主観ですが、この型は広い建屋にどーんとタービン発電機が置いてあり「これぞ発電所!」って感じがします。
【デメリット】
・初期費用が高い
下に復水器を置かなければならない分、基礎の高さを高くする必要があります。更にメンテナンス性を考慮して天井クレーンを設置するため、建屋全体の高さは相当なものになるのでその分高額化します。
・損失が大きい
横方向から流入してきた蒸気を最終段で下方向へ方向転換するため、フード損失(タービンの最終段から復水器までの流路抵抗による損失)が他のタイプより大きいです。
タービン・発電機・復水器を横方向に繋げ同じ高さに配置するタイプ。
メリットデメリットは下排気型の対になっています。コストパフォーマンスが良いので中・大型の発電所には良く採用されています。
【メリット】
・初期費用が少ない
復水器をタービンと同じ高さに配置するため下排気型のように高い基礎を作る必要がありません。
また、床が低いのでメンテナンスの際は移動式クレーン車を利用することも可能なため、天井クレーンを付けずに建屋を取り外せるエンクロージャ化することで更に費用を抑えられます。
・損失が少ない
先ほどの下排気型と違って排気蒸気をそのまま軸方向に復水器へ流入させるので方向転換の必要がなくその分フード損失が低減できタービンの高効率化ができます。
【デメリット】
・メンテナンス性が悪い
前述した建屋のエンクロージャ化により、タービンを点検する際は移動クレーン車の手配、エンクロージャ取り外し作業及び取り外したエンクロージャ置き場の確保などの手間が増えます。
また取り外したタービン付属部品なども下排気型は建屋内に置いておけますが、軸排気型は建屋が完全に開放される形になるため別途で養生して外に保管したりしなければならず、作業環境は悪いです。
多分あまり見かけないパターンですが、タービン発電機とは別途に復水器が設置されていて、タービンの上から排気蒸気を取り出すタイプ。
メリットデメリットは前述の軸流排気型とほぼ同じで、軸流排気型はコストメリットが大きい反面小型発電所には構造的に採用できない場合があるので、その場合にこの上排気型を採用されるという例があります。
【メリット】
・初期費用が少ない
軸流排気型と同じ。
・復水器設置場所の自由度が高い
他のタイプとは違い、図のように復水器をタービンや発電機と同じ基礎内に収める必要が無いので、例えばタービンの真横だったり少し離れた場所に設置することも可能となります。
【デメリット】
・大型排気配管による損失
タービン排気口から復水器までの接続管は大口径の配管が必要となり、その分圧力損失を考慮する必要があります。
また、復水器がタービンより上にくる場合はタービン側で発生するドレンを回収する装置も別途で必要になります。
・メンテナンス性が悪い
軸流排気型と同じですが、上排気型はタービンの解放点検の際に前述の大型配管を取り外す必要もあるのでメンテナンス性はさらに悪いです。
私が知っている発電所も下排気型が最も多いですが、見学で見た発電所の中には排圧タービンを使用している自家発電所が後付けで復水器を取り付けた上排気型という珍しい事例も見たことがあります。
別にこんなこと知ってても仕事や資格勉強に生きるわけでもないですが、発電所に勤めている方で知らなかった人のちょっとした雑学になれば良いと思います。