私がボイラーマンだ

3度の飯よりボイラー好き。ボイラーをこよなく愛する変態ボイラーマンの日常を綴ったブログ

ボイラー設備について~冷却塔(クーリングタワー)~

久々にボイラー設備についての記事を書こうと思います。

今回は冷却塔についてです。

 

【冷却塔とは】

冷却塔の役割は「冷却水の温度を下げる」ことです。

そもそも発電所の冷却水は

①発電に使用した蒸気を水に戻すための復水器

に大量に使用します。

その他

②タービン油の冷却

③発電機内部の冷却

④電動機のような回転機器の軸受の冷却

など現場各所の冷却のために使用され、当然冷却後の水の温度は上昇します。

これを再び温度を下げて冷却水として使用する為に冷却塔で温度を下げることになります。

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簡単にフロー図を描くとこんな感じ。

冷却塔の水は復水器や各所現場にポンプで送水され、冷却後に温度の上がった水を冷却塔で温度を下げ再び冷却水として使用。

冷却水は蒸発したりブローしたりする為そのまま使用し続けると水が減ってしまうので、その分は外部から補給します。

 

【構造】

発電所の冷却塔と聞くとどんなものを思い浮かべるでしょうか。

たまに映画などで出てくる大規模な物だと下の画像のような物があります。

巨大な冷却塔の壁 Ratcliffe-on-Soar発電所【2017年4月】 | 鉄道/ダム/橋etc.マニアの英国滞在記

これは「自然通風型」というものです。

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内部構造の説明図が良いものが無かったので外国語なんですが、ようは

暖かい冷却水は上から散布、下からは空気を取り込み向流で熱交換し温度が下がった水は下部に溜まって再び冷却水として使用される。

というもので、冷却する為の外気を取り込むのにファンなどの特別な動力を使用しない為運転コストが低いというメリットがあり主に大規模発電所などで使用されます。

 

 

でも実は皆さんの身近なところにも冷却塔は存在しています。

クーラーの室外機なんかも言ってしまえば冷却塔的な役割を持っています。

他に大型施設なんかに行って屋上駐車場なんかでよく見かける下画像のような物

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これが恐らく最も普及しているタイプの冷却塔だと思います。

これは「強制通風型」に分類されます。

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これは外気を取り込むのに送風機を利用します。

先ほどの自然冷却型と違いファンで強制的に大量の空気を取り込むことができるため、少ない設置面積で効率の良い熱交換を行うことが可能です。

 

私の勤める発電所もこの強制冷却型を採用しています。

 

【管理方法】

①定期点検

普段の点検では充填剤の破損が無いか、ファンの異音が無いか、そして冷却水ポンプのストレーナーの閉塞状況を見る程度です。

ストレーナーの入口と出口の圧力差が大きくなってきている場合はストレーナーを取り出して清掃を行います。

 

②水質管理

冷却塔で一番重要なのは冷却水の水質管理になると思います。

 

これがうまく出来てないと冷却塔内に大量の藻や泡が発生して困った事態になります。

これを防ぐために冷却水では主に「防スライム剤」「防食剤」といった薬品を注入しています。

 

大量の藻(スライム)の発生はそもそも水に存在している雑菌が原因になるので、これらの菌を殺すために「防スライム剤」が使用されます。

防スライム剤には一般的かどうかは分かりませんが私の知る限り「次亜塩素酸ソーダが使用されていることが多いと思います。

これは皆さんも馴染み深いプールの消毒剤である白い錠剤と同じ物です。

 

この次亜塩素酸ソーダは高い滅菌作用というメリットがある反面、腐食性があり薬品濃度が高いと設備や配管を腐食させてしまうデメリットも存在する為、これを防ぐために「防食剤」も併用したり塩素濃度管理を行ったりします。

 

私の会社では週1で残留塩素濃度をポータブル計器で測定し、約0.3mg/L±0.1程度の塩素濃度になるよう薬品注入量を調整しています。

 

③濃縮倍率計算

水質管理には薬品注入量管理の他にこの「濃縮倍率」を正しい管理値にするということも重要です。

 

冷却水の水は基本的に一定量の水を再利用して循環利用し続け、熱交換した冷却水の一部はどんどん蒸発していくため何もしないと水に含まれているマグネシウムやナトリウムのような硬度成分が濃縮して行って「スケール」と呼ばれるものになり、ポンプや配管に付着し性能や効率の低下を招いてしまいます。

 

これを防ぐために冷却水の一部をブローして抜き出して新しい補給水と入れ替える必要があるのですが、このブロー量の決定を濃縮倍率計算で算出します。

 

濃縮倍率は、冷却水に含まれる成分濃度を補給水の成分濃度で割った値で算出されます。ただし成分値が分からない場合も多いので、今回は私が行っている簡単な計算方法で紹介します。

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飛散損失とはファンの吸込み時や冷却水の落下時などに外部へ飛び出ていく水の量の事を指します。この水の量は四季を問わず一定値です。

計算式の分子に当たる計算式は熱交換時に失われる蒸発損失量の算出で、冷却塔へ補給した水の量からブローで抜き出した補給水と飛散損失分の補給水を差し引いた値=蒸発により失われた冷却水量と仮定しています。これは夏季・冬季で条件が変化します。

 

計算例

・冷却塔への補給水量=100t/h

・ブロー量=20t/h

・飛散損失量=5t/h

である場合、分子である蒸発損失量は100-20-5=75t/h、分母は20+5=25t/h

よって75/25+1=「4」が濃縮倍率ということになります。

 

飛散損失は冷却塔の取説に記載があるはずですので後は補給水量とブロー量が分かれば濃縮倍率が簡単に算出できます。

 

ちなみに濃縮倍率の設定値はメーカーにより違いがあるかもですが私の会社では約4倍となるようブロー量を調整しています。

なので例えば外気が寒くなってきて補給水量が100t/hから80t/hに低下した場合、濃縮倍率は(80-20-5/20+5)+1=3.2となるため、これが4となるようブロー量を逆算して求めると(80-x-5/x+5)+1=4よりx=15t/h

よって20t/hで行っていたブロー量を15t/hへ減らします。

 

ちなみにこの計算方法は公害防止管理者水質の科目「大規模水質」でも勉強できるので知っている人も多いと思います。

 

【最後に】

冷却塔は意識すれば普段の生活環境でけっこう見かける設備です。

何気なく見ている設備ですが、管理する側の立場になるとこれが結構面倒な設備なんです。

ビルメン業界の方のブログを見てたりするとたまにこの冷却塔の水質で苦労しているという人も見かけます。

 

もし冷却塔で藻や泡が発生する、設備が腐食する等の事象が起こっている場合は十中八九前述の残留塩素濃度管理がうまくいっていない可能性があるので、メーカーによる正しい測定管理や薬品注入量調整、そして濃縮倍率計算を行うことをお勧めします。