私がボイラーマンだ

3度の飯よりボイラー好き。ボイラーをこよなく愛する変態ボイラーマンの日常を綴ったブログ

プラントの愉快な仲間たち【前職編】ボイラー愛0のエース運転員Yさん

私がK班長の次に同じ班で仕事をしたのがこのYさんになります。

そして何だかんだ私が退職するまでずっとお世話になった先輩です。

 

Yさんはその職場では、上司に次いで唯一発電所の立上げから試運転まで経験した人で頭の回転も速く、実際運転員の中では断トツ技術も知識もある紛れもない「エース」の人でした。

 

・Yさんプロフ

年齢:30歳(当時)

見た目:中肉中背で可もなく不可もなく。至って平凡。

好きな物:旅行、食べ歩き

特徴:どんな局面でも冷静沈着

 

独身貴族を満喫しておりプライベートでは良くラーメンやお寿司を奢ってくれました。

 

Yさんは本当に色んなことを知っており、Kさん時代に聞いても分からなかったこと&間違っていたこともYさんに聞けば100発100中で答えが返ってきました。

プラべートで世話になったのがKさんなら、Yさんは間違いなく仕事で最もお世話になった人です。

そして私の中で

「試運転経験者はすごい」

理論が誕生し、転職を考える要因ともなったキーパーソンでもあります。

 

そういった知識と経験から培ったボイラー運転時の冷静っぷりは凄まじく

この人宇宙飛行士にもなれたんじゃないの?

ってくらいです。

ボイラートラブル時に私が震える手で何とかマウスを操作している中、

隣にいるYさんが「あぁ、これはこうすれば大丈夫だから焦んなくて良いよ」と言っている時の頼もしさったら無いですね。

 

逆にそのYさんが「これはちょっと無理かな・・・」と言った時の絶望感もすごいですが。

 

Yさんとは最も長く同班で仕事をしたので最も多くトラブルも一緒に経験しました。

それを尽く冷静に対処してきたYさんとのエピソードをご紹介。

発電所全停止(ブラックアウト)

通常運転していたある日、突然発電所の電源が全て無くなりプラント全停止となったことがあります。

〇その時のエピソード

doragonking.hatenablog.com

 すでにエピソードとして書いていますが、この時私は当然パニック。

何をすれば良いかなんて一切分からず、Yさんが淡々と作業していくのを見ていました。

 

この時Yさんから言われた

「全停電は何も動いてないし動かせないしでやる事限られてるから楽だよ。むしろ下手に何か動力が生きてるほうが面倒くさい」

という言葉と教えてもらった対応方法は現職場に入社した際、全停電になった際の対応方法としてあたかも自分の言葉のように他の人達へドヤ顔で語ったものです。

 

本当は突っ立ってただけなんですが。

まぁ今はちゃんと対応できると思うし大丈夫でしょう!

 

②蒸気タービン真空ポンプ2台停止

タービンには真空度を高めるための真空ポンプという機器が2台あり、1台が故障しても予備機が自動で立ち上がるようになっていました。

しかし、ある時この真空ポンプが何らかのトラブルで停止してしまい、更に予備機の立ち上がりも失敗したという絶望的な状況となりました。

この時中央でオペレーターをしていた私は涙目でYさんに報告。

私「これもう(タービン)駄目っすかねぇ(´;ω;`)」

と言った時、

Yさん「いや大丈夫。一度真空確立されていればいきなり真空が悪くなることってことにはならないはずだから。ちょっと現場でポンプ回してみるから待ってて」

と言い残し現場で作業を開始しました。

その間タービンを監視していましたが、確かに真空度がどんどん悪化するということもなく、Yさんが現場でポンプを回すまで何とか持ちこたえることが出来ました。

後になんで対処が分かったか聞いたところ「試運転時代にも同じことがあって、メーカーの人に聞いた※」からだそうです。

※「真空ポンプはあくまで最初の立ち上げ時にタービン内の空気を抜くのがメインの役割。通常運転時のタービン内部の真空度は冷却水による凝縮力で保持されててポンプは助力してるだけだから、両方止まってもいきなり真空度がガンガン悪化する訳ではないよ」とのこと。さっすがぁ!

 

③ボイラー失火からの超絶裏技復旧術

私のプラントは燃料の品質がすこぶる悪い時、炉内温度が下がって下手すると失火する時がありました。

大抵は復旧できずに一度ボイラー停止させてから再着火操作をするのですが、Yさんに関しては一味違いました。

Yさんはこの失火トラブルが起こった際、以下操作で最速復旧するのです。

1、重油バーナを速攻点火し最速で定格量まで上げる

2、空気量を全手動で調整し内部の残燃料を再着火。

3、ある程度炉内温度が落ち着いたら燃料を少しづつ入れ復旧。

1~3までの操作を実に5分程度でやってのけます。

この2の操作判断が非常に難しく、酸素量などを見ながら操作するのですがこの時この操作が出来るのはYさんだけでした。

というかYさん以外はこの操作を禁止されていました。上司曰く理解できていない人がこの操作をするのは危険だからだそうです。

まぁ下手すれば炉内爆発の危険があるので当然と言えば当然ですね。

 Yさん「このタイミングでファンのダンパを20%から40%くらい一気に開けると炉内で再燃焼が始まる。慣れれば簡単なんだけどね」

そう言われても・・・分かりません・・・

 

 

こんか感じでボイラーマンとして申し分ない技量をもっていたYさんですが、そんなYさんにも一つ問題がありました。

 

それは、「ボイラーマンとしてのやる気が無い」という唯一にして最大の欠点です。

 

このことは私がいた当時からずっと言っていました。

「この職ほんとは嫌なんだよね。配属されてる以上はちゃんとやるけど」

なぜなのか・・・こんなに優秀なのに。いや、なまじ優秀であるが故にボイラーマンみたいな仕事には向いていなかったのでしょう。

本人は交代勤務や年末年始の無い不規則な生活にも嫌気がさしていたようです。

 

 その言葉通り、私が辞めた1年後に本人希望で別部署の日勤へ異動したそうです。

勿体ないとは思いますが本人の適性があっていない以上仕方のないことです。

 

上司も私がスタッフとなった時に再三漏らしていました。

「Y君にやる気さえあればすぐにでも僕の後釜にできたんだけどね」と。

Yさんに唯一不満があるとすれば、このせいで私やKさんみたいな人が変わりに色んな業務をやらなくてはいけなくなったことでしょう。

 

 

ちなみにこの先輩により私の中で生まれた

「試運転経験者は未経験者より数段技量が上がる」

理論ですが、転職して現職場で実際試運転を経験した身として言えるのは

「もちろんそうだが、それでも結局人による」

ということです。

誰しもがYさんのようになれる訳ではないということがわかりました。トホホ(;´д`)